「日本のお祭り」 〜市民参加型のお祭りへ〜             齋藤 慎一

 

    宮城県 「仙台七夕祭り」

 

毎年8月6日から8日にかけて開催される仙台七夕祭りは、数百年の伝統がある東北夏の三大祭のひとつである。目抜き通り(市街で最も人通りの多い道路、繁華街)の竹飾りは色鮮やかな和紙の吹流しでいっぱいになり、街は優雅そのもの。人々は浴衣を着て、うちわを片手に見物する。

 

夕方から始まる動く七夕パレードは、年々華やかさを増す市民参加のお祭りである。また、5日の前夜祭は広瀬川河畔の花火大会もあり、西公園一帯は人垣でいっぱいになる。

 

《仙台七夕祭りの問題点》

 

東北を代表する三大祭と呼ばれているにもかかわらず、近年は中心部の地元商店街の数が減り、祭り自体も今ひとつ盛り上がりに欠けてきている。同時に観光客も減少しているといった現実もある。元々は仙台七夕を模範にしたとされる神奈川県平塚市の七夕祭りのほうが、火災日数は多いものの観光客動員数で勝っている。また娯楽とされていた祭りが近年の娯楽の多様化で、興味の対象から外れ、同様の祭りが各地に点在することによって、わざわざ仙台まで足を運ばなくても見られるようになった。

 

仙台市中心部でアンケートをとった結果、10~20代の多くは仙台七夕に不満が多く、マンネリ化で仙台市民でさえ祭りに毎年足を運ぶことが少ないという結果となった。そこで「他の七夕との類似点」「マンネリ化」「伝統の廃れ」という問題に行き着いた。

 

《仙台七夕の問題点に対する地元大学生の提案》 〜五感に訴える祭りを作れ〜

 

味覚 他の七夕との差別化のためにも宮城の豊かな食材を活かした食のアピール(具体的には宮城県主催の食材王国みやぎと合致させる。若手料理甲子園の開催も合わせて食をアピール)。

 

聴覚 七夕には「音」がない。ジャズフェスに代表されるように、仙台にはアマチュアミュージシャンも多くいるので、見る人への楽しさを提供し、市民参加型の祭りに脱皮を図る。

 

触覚 手足を使って楽しめる企画ということで、全市小学校対抗七夕飾りコンテスト、観光客が持ち帰れるようみに七夕教室を開催、常時開設の「七夕博物館」、市民が常に七夕祭りを意識できるように七夕サークルの発足により七夕ファンを増やす。

 

嗅覚 以前は先祖崇拝の象徴だった「七夕線香」の復活。防災上の観点から戦後途絶えてしまったが、時間帯や専用区域を用いておこなう。

 

視覚 昔ながらの仕掛けを復活。美術・デザインを学ぶ若者の発表の場とする。市民の浴衣パレードや小学校・幼稚園児童による七夕飾りコンテストの開催により、子供やその親も参加できるようにする。

 

 

    青森県 「青森ねぶた祭り」

 

青森ねぶた祭りは青森県を代表する祭りで、例年たくさんの観光客が訪れる。平成14年の東北新幹線八戸−盛岡間開業に伴い、より多くの人に青森県へ来てもらえるよう検討している。

 

青森市では、関係団体の連携の元、「青森ねぶた祭り」の魅力の充実を図る一方で、ねぶた祭りの正しい伝承のための条例を制定し、意識啓発などを促進して健全化を図るとともに、子供ねぶたや地域ねぶたの活性化を図っている。また青森市の観光PR及び文化・国際交流の推進のため、大英博物館への展示等ねぶたの魅力を国内外へ発信している。

 

《青森ねぶた祭りの問題点》

 

毎年300万人以上が訪れるにもかかわらず、仮設トイレや駐車場が不足している。また大量に発生するごみの処理の問題も深刻。参加者から、ねぶた祭りの最終日の花火大会に仮設ステージを作り、三味線の演奏や小型ねぶたを飾ってはどうかといった提案も出ている。

 

これらの問題・提案に関しては、ねぶた祭りの主催者である青森市、青森商工会議所、青森観光協会で検討されている。

 

《青森市長期総合計画》

 

    青森市には八甲田山、陸奥湾に代表される四季折々の豊かな自然資源、世界に誇る「青森ねぶた祭り」や版画芸術など多様で特色のある観光資源があり、これら自然、文化等の豊かな資源を有効に活用し、将来にわたって無理なく持続できる観光を実現できるよう、観光資源の保全・活用に努めるとともに、地域の特性を活かした整備を進めていく。

 

    青森市への観光客数は、長引く景気の低迷や、団体から個人・グループ旅行への観光形態の変化等により、ここ数年減少傾向にあるとともに、依然として「青森ねぶた祭り」「紅葉の八甲田」に代表されるように夏と秋の二季型になっており、通年観光の実現のため、雪等を積極的に活用した冬季観光を強化していく。